1. 招待講演

2015年度の招待講演は下記2名の先生方を予定しております。

 

Hanna Kokko 先生

Institute of Evolutionary Biology and Environmental Studies, University of Zurich

Title: Towards cancer-aware life history theory

Evolutionary biologists and cancer biologists do not often overlap with their conferences or journals, even though it is becoming recognized that cancer cells are subject to natural selection, and that organisms have evolved tumour suppression mechanisms. The limited overlap might reflect a view that cancer only becomes a significant problem when organisms are freed from other sources of mortality (in humans, cancer incidence rises sharply at old ages). The flipside of this argument is, however, that the age-dependent pattern of cancer arises rather naturally from cancer defences that fail over time in a stochastic manner; the efficiency of these defences can thus be subject to natural selection, and should be incorporated in life-history theory. I will discuss some simple models and consequences, including the possibility of cancer risk as an outcome of sexual conflict in sexually dimorphic populations.

 

池谷和信 先生

国立民族学博物館・総合研究大学院大学 民族文化研究部

演題:狩猟採集民と人類の社会進化-世界のフィールドワークから-

 私は、これまで人類の生活様式のなかで狩猟採集社会に関心を持ち、主として生態人類学の視点から彼らと自然とのかかわりあいを把握してきた。対象地域は、ホモ・サピエンスの誕生したアフリカに焦点を当てながらも、アフリカ大陸以外への人類の移動にともないユーラシアの熱帯、温帯、寒帯、そしてアメリカ大陸などである。人類は、多様な環境のなかでどのように技術や社会などを展開してきたのであろうか。現時点においても、「誰が、狩猟採集民であったのか?」「狩猟採集民の共通する文化とは何か?」など、十分に明らかにされていない課題は多い。
 その一方で、狩猟採集民を対象にした生態人類学的研究は、過去50年の間、大きな展開を余儀なくされた。1960年代には、アフリカの狩猟採集民サン(ブッシュマン)やハッツアなどが典型的な研究対象としてされ、民族誌資料から人類の初期的姿を把握するための一般モデルが構築された(「伝統主義」)。1980年前後からは、このような「伝統主義」の見方が批判されて、過去と現在の社会とは容易に結び付けることは難しいとみなす「修正主義」の見方が支持され、両者のあいだに論争が生じてきた。現在でもこの論争は解決されたわけではないが、両者を統合するような議論が生まれている。それは、過去数千年や数万年の長期的時間のなかで狩猟採集民の存在を位置付ける立場である。
 私は、このような研究動向をふまえて、狩猟採集民からみた地球環境史という枠組みから研究を続けてきた。ここでは、アフリカ、アジア、アメリカでの狩猟採集社会でのフィールドワークを通して、狩猟採集民と人類の社会進化とのかかわりについて論議をすることを目的とする。とりわけ、人類にとっての「ものの獲得」と「ものの分配」に焦点を当てて把握する。